MENU

土地を買う前に確認したい「盛土規制」――住宅地から山林まで変わった安全管理

住宅地の擁壁と山間部の斜面が連なる土地を点検する様子。

土地を買う前に確認したい「盛土規制」――住宅地から山林まで変わった安全管理

盛土規制法で最も大きく変わったのは、宅地だけでなく、農地や森林、土石の一時的な置き場まで、土地の用途を問わず規制する仕組みになったことです。

規制区域に入っただけで直ちに工事や補修が必要になるわけではありません。ただし、一定規模以上の盛土・切土などを行う際には許可が必要となり、既存の盛土がある土地では所有者や管理者、占有者に安全維持の努力義務があります。

この記事の要点は次の4つです。

  • 自宅の庭だけでなく、農地や山林で行う造成も対象になり得る
  • 規制区域内でも、工事をしなければ通常は新たな申請手続きは生じない
  • 許可後も中間検査、定期報告、完了検査で施工過程を確認する
  • 土地の購入前には、区域図だけでなく造成履歴や擁壁、排水設備も確認したい
目次

変わったのは「宅地中心」から「用途を問わない規制」への転換

制度の核心は、土地の名目ではなく、崩落した場合に人家などへ被害が及ぶかどうかで規制する点にあります。

従来の宅地造成等規制法は、主に宅地造成に伴う崖崩れや土砂流出を防ぐ制度でした。しかし、農地や森林などでは別々の法律や条例が関係し、規制が十分に及ばない場所もありました。

2021年に静岡県熱海市で大雨に伴う盛土の崩落と大規模な土石流災害が発生したことなどを受け、法律は抜本的に改正されました。新しい盛土規制法は2023年5月26日に施行され、国土交通省と農林水産省が共同で所管しています。

規制の対象には、次のような行為が含まれます。

  • 住宅や事業用地を造るための盛土・切土
  • 農地や森林で行う一定規模以上の造成
  • 宅地以外で、人家などへ被害を及ぼす恐れがある盛土
  • 資材置き場などにおける土石の一時的な堆積

一方、区域内のすべての土工事に許可が必要になるわけではありません。許可対象になる規模や工事内容が定められているため、具体的な計画は自治体の担当窓口に事前相談する必要があります。

宅地と山間部は二つの区域で管理される

市街地周辺と、そこから離れた斜面・谷筋では、想定する被害の生じ方が異なります。

都道府県知事や政令指定都市・中核市の長などは、基礎調査を行ったうえで、土地を次の二つの区域に指定します。

宅地造成等工事規制区域

市街地や集落、その周辺など、盛土等が行われた場合に人家へ被害を及ぼす恐れがある区域です。

住宅の建築に伴う造成だけでなく、駐車場整備や土地のかさ上げなども、規模や形状によっては許可対象になります。住宅地では一つの盛土の上に複数の宅地が並び、擁壁や排水施設を共有している場合がある点にも注意が必要です。

特定盛土等規制区域

市街地や集落から離れていても、盛土が崩れると土砂が流下し、離れた人家などへ被害を及ぼす恐れがある区域です。

山間部では、盛土の直下に家がなくても安全とは限りません。谷筋に沿って土砂が移動する可能性があるため、地形や集水範囲を含めて区域が検討されます。

ここがポイント: 規制区域は「その土地が今すぐ危険」という判定ではありません。将来の盛土工事を管理し、既存の盛土を安全に保つための範囲です。

区域の指定状況は自治体ごとに異なります。国土交通省は全国の施行状況を公表していますが、自分の土地の境界まで確認するには、各自治体の区域図や地図情報システムを見るのが確実です。

工事前の許可だけで終わらない

新制度は、完成後の書類だけでなく、工事の途中も確認する仕組みを強めました。

許可対象となる工事では、地形や地質に応じた安全対策が求められます。さらに、工事の規模などに応じて次の確認が行われます。

  • 施工状況の定期報告
  • 完成後には確認しにくい工程の中間検査
  • 工事完了時の完了検査
  • 現場での許可標識の掲示

許可を申請するのは原則として工事主です。工事主には、土地所有者の同意を得ることや、周辺住民へ工事内容を事前に周知することも求められます。

無許可工事や命令違反などに対する罰則も強化され、最大で個人には懲役3年以下または罰金1,000万円以下、法人には3億円以下の罰金が設けられています。

所有者に求められるのは「古い盛土も含めた維持管理」

見落とされやすいのは、自分が造成していない土地でも、現在の所有者等が維持管理の当事者になる点です。

規制区域内で盛土等が行われた土地の所有者、管理者、占有者には、土地を常時安全な状態に保つ努力義務があります。区域指定より前に造られた盛土も対象です。

国のガイドラインは、日常的な確認点として次のような兆候を挙げています。

  • 擁壁や地面に新しい亀裂、ずれ、膨らみがないか
  • のり面から湧く水が増えたり、濁ったりしていないか
  • 排水溝に土砂や枝葉がたまり、水があふれていないか
  • 地盤の沈下や、樹木・塀の傾きが生じていないか

異常があれば、写真と日付を記録し、自治体の盛土規制担当部署や地盤・擁壁の専門家へ相談します。自分で亀裂を埋めるだけでは、地下水や盛土全体の変形を見逃す恐れがあります。

危険性が高く、必要な防災措置が取られていない場合、行政は土地所有者等に改善を勧告・命令できます。造成した事業者など原因行為者が別にいるときは、その者も命令の対象になり得ます。

費用と責任は誰が負うのか

新しく工事をする場合の調査、設計、許可申請、安全対策は、基本的に工事主側の負担です。

既存盛土の維持管理や補修では、現在の所有者等が対応を求められる場合があります。ただし、造成した者や工事施工者などに原因が認められれば、行政が原因行為者へ是正措置を命じることも可能です。

現実には、古い造成地で記録が残っていない、所有者が複数に分かれている、共用排水施設の管理者が明確でない、といった問題が起こります。国のガイドラインも、複数の土地所有者が関係する盛土では、互いに連携して全体を維持管理する重要性を示しています。

危険な既存盛土の調査や対策には公的な支援制度が利用できる場合もありますが、対象、補助率、住民負担は事業や自治体によって異なります。補助が当然に受けられると考えず、工事契約の前に自治体へ確認する必要があります。

土地の購入・相続時に確認したい5項目

区域内かどうかだけで購入を判断せず、盛土の状態と管理方法まで確認することが大切です。

自治体のFAQでは、「指定された土地で手続きが必要か」「購入時に説明されるか」といった質問が繰り返し扱われています。制度への関心が、工事事業者だけでなく住宅の所有者や購入者にも広がっていることが分かります。

購入や相続の際は、次の順に確認すると整理しやすくなります。

  1. 自治体の地図で二つの規制区域に該当するか調べる
  2. 売主や仲介業者に造成時期、許可・検査記録を尋ねる
  3. 擁壁、のり面、排水溝を現地で確認する
  4. 境界を越える盛土や共用施設の管理者を確かめる
  5. 増築、庭のかさ上げ、駐車場整備など将来の工事を自治体へ相談する

規制区域内の不動産取引では、盛土規制法に基づく制限が重要事項説明の対象になります。ただし、重要事項説明で区域と法的制限を確認できても、地中の状態や擁壁の健全性まで自動的に保証されるわけではありません。

購入を検討している土地に古い擁壁、大きな高低差、埋められた谷のような地形がある場合は、契約前に専門家の調査を検討する価値があります。

次に見るべきは自治体の区域図と運用実績

盛土規制法の枠組みは全国共通ですが、区域指定の日程、申請窓口、相談方法、手数料、条例による追加基準は地域ごとに違います。

今後の注目点は明確です。

  • 規制区域の指定後、自治体が既存盛土をどこまで把握できるか
  • 所有者不明や複数所有の盛土で管理主体を決められるか
  • 中間検査や定期報告を担う自治体の人員を確保できるか
  • 危険箇所の対策費を行政、原因行為者、所有者でどう分担するか

まずは自治体の区域図で自宅や所有地を確認し、盛土や擁壁があるなら、梅雨や台風を待たずに排水設備と亀裂の状態を記録しておく。その一歩が、制度を暮らしの安全につなげます。

参照リンク

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!
目次