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「一度使うとやめにくい」は変わるのか 成年後見制度、2026年改正後も残る費用の壁

自治体の相談窓口で成年後見制度について説明を受ける高齢者と家族。

「一度使うとやめにくい」は変わるのか 成年後見制度、2026年改正後も残る費用の壁

成年後見制度が使いにくいと言われる主因は、必要な手続が終わっても利用をやめにくく、本人の財産から後見人等への報酬が継続して支払われる可能性があることです。さらに、誰を後見人等にするかは家庭裁判所が決めるため、家族の希望どおりになるとは限りません。

こうした課題を受け、2026年6月に改正法が公布されました。必要な支援に権限を絞り、不要になれば終了できる方向へ制度は大きく変わります。ただし、施行は公布から2年6カ月以内。費用負担や地域の支援体制まで一挙に解決するわけではありません。

  • 現行制度は「補助・保佐・後見」の3類型
  • 申立費用とは別に、選任後の報酬が本人の財産から支払われる場合がある
  • 2026年改正では3類型を「補助」に一本化し、権限を必要な範囲に限定
  • 改正後も、報酬助成や相談体制には自治体差が残る
目次

使いにくさの核心は「入口」より「出口」にある

申立てそのものより、始めた後の継続期間と権限の広さが重い。これが現行制度への不安を生む中心点です。

現在の法定後見には、判断能力の程度に応じて補助、保佐、後見があります。後見では、成年後見人が原則として幅広い法律行為を代理し、本人がした法律行為を取り消せます。日用品の購入など日常生活に関する行為は取り消しの対象外ですが、預貯金、不動産、相続、介護サービスの契約など、生活の基盤に関わる範囲を扱います。

この仕組みは、詐欺被害を防ぎ、本人だけでは進めにくい契約を支えるために必要です。一方で、たとえば「自宅を売って施設費を用意する」という一つの目的で利用を始めても、その売却が終わっただけでは当然に終了しません。現行制度では、本人の判断能力が回復しない限り利用が続きやすいからです。

後見人は家族が自由に決められない

申立書に候補者を書くことはできますが、選任するのは家庭裁判所です。専門的な財産管理や親族間の利害対立が想定される場合には、弁護士、司法書士、社会福祉士などが選ばれることがあります。

最高裁判所の2025年統計では、開始時に選任された成年後見人等のうち、親族以外は83.6%でした。内訳には司法書士1万1,966件、弁護士8,903件、社会福祉士7,280件などが含まれます。誰を選ぶかという家庭裁判所の判断自体には、不服申立てができません。

専門職の選任は複雑な事務を安全に処理する意味があります。しかし家族側から見ると、「知らない第三者が家計を管理する」「希望した親族が選ばれない」という戸惑いにつながります。制度への評価が割れやすいのは、保護のための第三者性と、本人・家族の納得感が衝突するためです。

費用は申立時と利用中に分けて考える

大きな負担になり得るのは、入口の手数料より利用開始後の報酬です。

現行制度の申立てでは、基本的に次の費用が必要です。

  • 申立手数料:800円分の収入印紙
  • 登記手数料:2,600円分の収入印紙
  • 連絡用の郵便料:家庭裁判所ごとに異なる
  • 診断書、戸籍謄本などの取得費
  • 必要な事件で実施される鑑定料

2025年に鑑定が実施されたのは終局事件の約3.4%で、実施事件の85.8%は10万円以下でした。すべての申立てで鑑定料が発生するわけではありません。

報酬は本人の財産から支払われる

後見人等が報酬を受け取るには、家庭裁判所へ報酬付与を申し立て、審判を受ける必要があります。金額は一律ではなく、事務内容や本人の財産などを踏まえて裁判所が決め、認められた報酬は本人の財産から支払われます。

ここで重要なのは、申立人である家族が専門職と自由に料金交渉する一般的な委任契約とは違うことです。家族が「もう依頼しない」と決めるだけでは終了できず、報酬額も家族が直接決めるものではありません。

自治体によっては、資力が乏しい人を対象に申立費用や後見人報酬を助成しています。ただし、対象要件や助成上限は地域によって異なります。住んでいる市区町村によって使える支援が違うため、制度上の費用だけを見ても実際の負担は判断できません。

ここがポイント: 成年後見制度の費用を調べるときは、「申立てにいくらかかるか」だけでなく、「誰が選任され、報酬が何年間続く可能性があるか」「自治体の助成を使えるか」まで確認する必要があります。

2026年改正で権限と期間はどう変わるのか

改正の柱は、本人の能力を基準に広い権限を一括して与える仕組みから、必要な事柄ごとに支援する仕組みへの転換です。

2026年6月24日に公布された民法等改正法は、現行の後見と保佐を廃止し、判断能力が不十分な人を補助制度の対象に一本化します。主な変更は次のとおりです。

  • 家庭裁判所が必要な代理権、同意権、取消権を個別に定める
  • 必要がなくなった場合、家庭裁判所が各審判を取り消せる
  • 本人の利益のため特に必要な場合、補助人を解任できる
  • 補助人に、適切な方法で本人の意向を把握する義務を課す
  • 判断能力を欠く状態にある人には、重要な財産行為を取り消せる「特定補助人」を付けられる

これにより、「遺産分割だけ」「不動産売却だけ」といった限定的な利用がしやすくなると期待されます。支援の必要がなくなれば終了できるため、報酬が漫然と続く問題の緩和にもつながります。

ただし、改正法は原則として公布から2年6カ月以内の政令指定日に施行されます。2026年7月時点では現行制度が続いており、すでに利用している人を新制度へどう移すか、家庭裁判所が必要な権限をどのように見極めるかなど、実務の具体化が今後の焦点です。

見落とせないのは地域の担い手不足

法律を変えるだけでは、相談から選任後の支援までを担う人材は増えません。

2025年の成年後見関係事件の申立件数は4万3,159件で、前年より3.2%増えました。申立人では市区町村長が1万139件、全体の23.7%を占めています。親族だけでは手続を始められない人を、自治体が支える場面がすでに少なくないことを示す数字です。

一方、市民後見人が選任されたのは390件でした。市民後見人は、自治体などの研修を受け、家庭裁判所の選任後に活動しますが、養成講座だけでなく、選任後の相談・監督体制も欠かせません。人口規模や専門職の分布によって、地域の対応力には差が出ます。

制度改正後は、本人の状況に合わせて権限を細かく設計し、必要性を見直す作業が増える可能性があります。自治体の中核機関、家庭裁判所、福祉関係者、専門職が連携できなければ、柔軟な制度がかえって複雑な制度になりかねません。

利用を検討するときに確認したい4点

急いで申立書を作る前に、必要な支援を具体的な行為に分けることが大切です。

  • 困っているのは預金の解約、不動産売却、相続、介護契約のどれか
  • 継続的な財産管理が必要か、一度限りの手続で足りるか
  • 本人は誰に、どの範囲まで任せたいと考えているか
  • 市区町村に相談窓口や費用・報酬の助成制度があるか

相談先は、市区町村の成年後見担当窓口、地域包括支援センター、社会福祉協議会、地域の中核機関などです。本人の判断能力がまだ保たれている段階なら、任意後見や日常生活自立支援事業など、別の選択肢が適する場合もあります。

今後の最大の注目点は、限定的な権限と終了の仕組みが、実際の審判や金融機関・介護現場の手続で機能するかです。施行日、既存利用者の移行方法、報酬の決め方、自治体助成の対象拡大。この4点が明確になって初めて、「使いにくさ」がどこまで解消されるかを判断できます。

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