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介護休業だけでは離職を防げない 船橋市の日曜相談に見る「両立支援」の使い方

駅前の相談窓口で介護と仕事の両立について相談する会社員。

介護休業だけでは離職を防げない 船橋市の日曜相談に見る「両立支援」の使い方

仕事と介護の両立支援は、休みを取るだけでは十分に機能しません。会社で勤務を調整すると同時に、自治体の窓口で介護保険サービスを組み立てて初めて、働き続ける現実的な道筋ができます。

千葉県船橋市が2026年度に始めた日曜の出張相談窓口は、その接続を助ける取り組みです。平日に動きにくい会社員が、無料・予約不要で地域包括支援センターの専門職に相談できます。

この記事の要点は次の4つです。

  • 船橋市の相談窓口は月2回、日曜午前に船橋駅前で開設
  • 介護休業は、介護を一人で担う期間ではなく、サービスを整える準備期間
  • 会社には制度の個別周知と利用意向の確認が義務付けられている
  • 実際の使いやすさは、職場の人員体制、収入、地域の介護サービス供給にも左右される
目次

船橋市が日曜午前に介護相談を開いた

今回の特徴は、働く人が窓口へ行ける時間を行政側が用意したことです。

船橋市は、船橋駅前総合窓口センター「フェイス」5階の相談室で、地域包括支援センターの出張相談を実施しています。2026年度は原則として月2回の日曜日、午前9時から正午まで。最終受付は午前11時40分で、料金も予約も必要ありません。

相談できるのは、すでに要介護認定を受けた家庭だけではありません。

  • 親の生活に不安が出てきたが、何から始めればよいか分からない
  • 介護保険サービスの申請方法を知りたい
  • 離れて暮らす高齢の親が心配
  • 仕事を続けながら利用できる支援を整理したい

こうした初期段階の相談も対象です。ただし、対応は窓口での対面相談に限られ、電話相談は行われません。

日曜日に駅前で相談できる意味は小さくありません。地域包括支援センターが平日に開いていても、勤務中の人が足を運べなければ制度は利用につながらないからです。

一方、月2回、午前中のみという限界もあります。相談が集中した場合の待ち時間、対面で来られない人への対応、相談後に必要となる平日の認定調査や事業者との調整などは、別に考える必要があります。

両立支援が使えるかは「会社」と「地域」をつなげられるかで決まる

離職を避ける鍵は、勤務先の制度と地域の介護サービスを別々に考えないことです。

会社が担当するのは、休業、休暇、短時間勤務、残業の免除といった働き方の調整です。自治体や地域包括支援センターは、要介護認定の申請や介護サービスの相談を受けます。ケアマネジャーは、本人と家族の生活に合わせてサービス利用を具体化します。

役割を整理すると、次のようになります。

  • 本人・家族:介護の状況を会社へ伝え、自治体や地域包括支援センターへ相談する
  • 勤務先:利用できる制度と申出先、介護休業給付について個別に知らせ、利用意向を確認する
  • 市区町村:要介護・要支援認定を行い、介護保険サービスへの入口を担う
  • 地域包括支援センター:高齢者の生活、認知症、介護サービスなどを総合的に相談できる窓口になる
  • ケアマネジャーや介護事業者:訪問介護や通所介護など、日々の支援を組み立てて提供する

介護休業は「自分で介護し続ける93日」ではない

介護休業は、対象家族1人につき3回、通算93日まで取得できます。一定の要件を満たす雇用保険の被保険者には、休業開始時賃金日額の67%相当の介護休業給付金があります。

重要なのは使い方です。厚生労働省は、休業期間を本人が介護に専念する時間ではなく、次のような体制を整えるための準備期間と位置付けています。

  • 市区町村や地域包括支援センターへの相談
  • 要介護認定の申請
  • ケアマネジャーとの打ち合わせ
  • 訪問介護やデイサービスなどの手配
  • 家族内の役割分担
  • 復職後の勤務時間や業務量の調整

介護休業だけで長期の介護を乗り切ろうとすれば、93日を使い切った後に行き詰まります。休業中に「自分が不在でも回る仕組み」をつくれるかが分かれ目です。

ここがポイント: 会社の制度は働き方を調整し、自治体の制度は介護を家庭の外へつなぎます。片方だけでは、離職を防ぐ支援として不完全です。

2025年の法改正で会社の説明責任は重くなった

制度を知らないまま退職を選ぶ事態を減らすため、会社側には先回りした情報提供が求められています。

2025年4月施行の改正育児・介護休業法により、事業主には介護離職防止に向けた対応が義務付けられました。

介護に直面したと申し出た従業員に対し、会社は次の内容を個別に周知し、制度を利用する意向があるか確認しなければなりません。

  • 介護休業と介護両立支援制度の内容
  • 社内の申出先
  • 介護休業給付金

周知や意向確認は、面談、書面交付、一定条件下のFAXや電子メールなどで行います。制度の利用を思いとどまらせるような説明は認められません。

さらに、従業員が40歳になる時期には、介護に直面する前の情報提供も必要です。社内研修、相談窓口の設置、利用事例の提供、利用促進方針の周知のうち、少なくとも一つを実施する義務もあります。

ただし、改正によって全員が希望どおりに在宅勤務できるわけではありません。介護中の従業員がテレワークを選べるようにする措置は、事業主の努力義務です。接客、製造、運送、医療・福祉など、勤務場所を動かしにくい職種では別の調整が欠かせません。

「制度がある」ことと「使える」ことの間には差がある

最大の壁は、制度の名称ではなく、申出後に仕事と収入をどう維持するかです。

総務省の2022年就業構造基本調査では、介護・看護を理由に直近1年間で前職を離れた人は約10万6,000人でした。女性が約8万人を占めています。制度が整備されても、離職が現実の問題であることは変わりません。

厚生労働省委託の実態調査では、介護休暇を利用しなかった理由として、制度未整備、制度を知らないこと、代替職員がいないこと、業務量の多さ、利用しにくい職場の雰囲気などが挙げられました。

ネット上で見られる「制度があっても職場で言い出しにくい」「休めても収入減が心配」といった受け止めと重なる問題です。個々の投稿を一般化することはできませんが、公的調査でも使いにくさが具体的に表れています。

費用は誰が負担するのか

費用面も一本化されていません。

  • 介護休業中の賃金を会社が支払う法律上の義務はない
  • 一定の要件を満たせば、雇用保険から67%相当の介護休業給付金が支給される
  • 介護保険サービスには、所得などに応じて原則1~3割の自己負担がある
  • 交通費、配食、家事支援、施設の居住費など、介護保険外の負担が生じる場合もある

つまり、相談窓口が無料でも、その後の介護生活が無料になるわけではありません。勤務時間を減らした場合の収入と、サービス利用料を同時に見積もる必要があります。

自分の地域で動くなら、最初の順番を間違えない

退職届を出す前に、会社と地域の両方へ相談することが最優先です。

家族の介護が急に必要になったときは、次の順番が現実的です。

  1. 親族の状態、通院先、生活上できなくなったことをメモする
  2. 居住地の地域包括支援センターか市区町村の介護保険窓口へ連絡する
  3. 勤務先へ介護に直面したことを申し出て、利用可能な制度の説明を求める
  4. 介護休業が必要なら、原則として開始予定日の2週間前までに申し出る
  5. 休業中に認定申請、サービス手配、家族の分担、復職条件を決める

相談先は、介護をする人の勤務先がある自治体ではなく、原則として介護を受ける本人が暮らす市区町村を起点に探します。遠距離介護では、この点を最初に確認しておくと動きやすくなります。

船橋市のような休日相談が自分の地域になければ、地域包括支援センターに電話相談や予約対応の有無を確認してください。会社が制度を説明しない、利用を妨げる、要介護2以上でなければ使えないなどと一律に断る場合は、都道府県労働局の雇用環境・均等部(室)が相談先になります。

次に問われるのは相談後の「つながり方」

船橋市の日曜窓口は、平日に相談できない人へ入口を広げました。しかし、本当の評価は相談件数だけでは決まりません。

今後見るべきなのは、次の点です。

  • 相談から要介護認定やサービス利用まで円滑につながったか
  • 相談者が勤務先の制度を実際に利用できたか
  • 月2回の対面窓口で需要を受け止められるか
  • 遠距離介護や非正規雇用の人にも支援が届くか
  • 地域の介護人材とサービス枠を確保できるか

両立支援が「使える制度」になるかどうかは、パンフレットの充実度ではなく、相談後も仕事を辞めずに暮らしを回せた人がどれだけ増えるかで判断すべきです。

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