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売れた粗大ごみは「ごみ」なのか 厚木市のネット販売が示すリユース拡大の条件

自治体のリユース拠点で再販売される家具や生活用品を確認する人々。

売れた粗大ごみは「ごみ」なのか 厚木市のネット販売が示すリユース拡大の条件

自治体による粗大ごみのリユースは、施設内での展示販売から、ネット出品、住民が直接持ち込める官民連携拠点へと広がり始めています。

神奈川県厚木市は2026年6月19日、市が回収した粗大ごみや不要になった庁舎備品を「メルカリShops」と「ジモティー」で販売する取り組みを開始しました。初日に出品した9点は6月30日までに完売。さらに7月31日には、住民がまだ使える不用品を持ち込める「ジモティースポット厚木」が開設されます。

広がるかどうかを決めるのは、ネットに出品できるかではありません。回収した品物の選別、保管、受け渡しを、誰が継続して担うかが本当の分岐点です。

  • 厚木市は家電、家具、アウトドア用品、庁舎の机や椅子などを販売
  • 市が類似商品の市場価格を参考に販売額を決める
  • 初回9点が完売し、中古品を求める需要が確認された
  • 今後は販売点数だけでなく、ごみ削減量や運営費も見る必要がある
目次

厚木市で始まったのは「回収後」と「廃棄前」の二つのリユース

今回の特徴は、自治体が回収した品物の再販売と、住民がごみにする前に持ち込む仕組みが並行して動き出すことです。

厚木市が6月に開設した公式ショップでは、市民が粗大ごみとして排出した物のうち、再利用できる家電製品、家具、アウトドア用品などを販売します。庁舎で不要になった机や椅子も対象です。

販売価格を決めるのは市です。類似商品の市場価格を参考にし、メルカリShopsでは全国の利用者に、ジモティーでは地域に近い利用者に届けます。

地元紙のタウンニュースによると、初日に出品された9点は6月30日までに完売しました。その後に追加された4点も、同日時点で残り1点となっています。小規模なスタートではあるものの、「粗大ごみとして出された品物でも、価格と状態が合えば買い手がつく」ことを示す結果です。

7月31日には持ち込み拠点も開設

もう一つの動きが「ジモティースポット厚木」です。7月31日に市内で開設され、まだ使える不用品を住民が持ち込めるようになります。

ネット販売だけの場合、市が回収した後に再利用品を選び出すため、収集や搬入にかかる手間はすでに発生しています。一方、持ち込み拠点で譲渡・販売につながれば、品物を廃棄物として扱う前に流れを変えられます。

この違いは大きいものです。

  • 回収後の販売:すでに集まった粗大ごみから再利用可能品を救い出す
  • 廃棄前の持ち込み:住民が処分を申し込む前に民間拠点へ持参する
  • 個人間の譲渡:住民自身が掲示板やフリマサービスで譲り先を探す

一つの方法ですべてを賄うのではなく、品物の状態や住民の事情に応じて出口を増やす形です。

なぜ自治体が中古品販売に乗り出すのか

最大の目的は販売収入ではなく、粗大ごみとして処理する量を減らすことです。

粗大ごみは、自治体が収集または受け入れた後、破砕や解体、焼却、資源回収などの工程をたどります。まだ使える家具であっても、通常の処理ルートに入れば製品としての価値は失われます。

環境省は3Rの優先順位について、発生抑制の次に再使用を位置付けています。素材へ戻すリサイクルより先に、製品のまま使い続ける方が、製造や廃棄に伴う資源消費を避けやすいためです。

2025年4月には、市町村向けのリユース手引きを10年ぶりに改訂しました。従来の施設販売だけでなく、民間のオンラインプラットフォームと自治体が連携する事例が増えたことが背景にあります。

費用負担は「売れた金額」だけでは判断できない

自治体側には、販売収入と処理費用の削減という二つの利点があります。ただし、売上がそのまま利益になるわけではありません。

出品までには、少なくとも次の仕事が発生します。

  • 再使用できるか、安全面に問題がないかを確認する
  • 清掃し、必要に応じて簡単な修理を行う
  • 写真を撮影し、寸法や傷などの商品情報を記載する
  • 売れるまで保管する
  • 購入者との連絡、決済、引き渡しに対応する
  • 売れ残った品物を最終的に処理する

行政が直接担えば職員や委託先の作業費がかかります。民間事業者に任せれば運営負担を分けられますが、手数料、責任範囲、実績データの扱いを契約で明確にする必要があります。

ここがポイント: 粗大ごみリユースの成否は売上額ではなく、「処理を免れた重量」と「選別・保管・受け渡しに要した総費用」を合わせて判断する必要があります。

すでに年間87トンを販売する自治体もある

厚木市の初回完売は需要の存在を示しましたが、継続性を考えるには先行自治体の年間実績が参考になります。

東京都町田市の審議会資料によると、2024年度に粗大ごみの再生品を6,324点、重量で約87トン販売しました。ジモティーの掲示板には4,830点を掲載し、そのうち4,264点、約88%が販売されています。

ネット掲載には、来店前に在庫を確かめられる効果もありました。町田市の資料では、店舗を訪れる高校生や大学生などの若年層が増えたと報告されています。

一方、葛飾区では、粗大ごみとして出された家具を修理し、500円または1,000円で提供しています。修理が不要な品物は別会場で無料提供する仕組みです。購入者は自分で品物を引き取り、故障や破損について区は責任を負わないという条件も明記されています。

これらの例から見えるのは、リユース販売に唯一の正解がないことです。

  • 修理して低価格で販売する
  • 修理せず無料で譲渡する
  • ネットに掲載して実店舗へ誘導する
  • 全国向けのサービスで販売する
  • 地域内で直接受け渡す

人口、保管場所、職員体制、交通事情によって、適した方法は変わります。都市部で成立した方式を、そのまま小規模自治体へ移せるとは限りません。

見落とされやすいのは「持ち込めない人」と「引き取れない人」

安価な中古家具が並んでも、自力で運べない人には利用しにくいままです。

大型家具のリユースには、出す側と受け取る側の両方に運搬の壁があります。車を持たない人、高齢者、障害のある人、集合住宅の上階に住む人は、持ち込みや引き取りが難しい場合があります。

環境省が2024年度に採択した八王子市のモデル事業では、持ち込みが困難な住民向けに個別回収を実施しました。これは、拠点を用意するだけでは参加できない層がいることを前提にした取り組みです。

ただし、訪問回収を増やせば車両、人員、日程調整の費用も増えます。無料回収を無制限に広げれば、本来の粗大ごみ収集との役割分担も曖昧になります。

自治体が決めなければならないのは、次の線引きです。

  • 訪問回収の対象者を限定するか
  • 運搬費を自治体、事業者、利用者の誰が負担するか
  • 家電や家具の安全確認をどこまで行うか
  • 売れ残りや持ち込み不可品を誰が処理するか
  • 事故や故障が起きた場合の責任をどう表示するか

利便性を高めるほど費用と責任は増えます。ここを曖昧にすると、善意や現場職員の追加作業に依存する制度になりかねません。

地元の反応が示したのは「もっと手軽に」という需要

厚木市では、販売開始前から、フリーマーケットより簡単に利用できる場所を求める声が市へ寄せられていました。

市が公開した住民提案には、フリーマーケットは準備や店番に時間がかかり、参加の敷居が高いとの意見が記録されています。まだ使える物がごみ置き場に出されているとして、ジモティースポットの設置を求める内容でした。

市は2026年5月の回答時点で「設置予定はない」としながら、事業者への誘致を続ける方針を示していました。その後、7月の開設が決まっています。

また、公式ショップの初回9点が短期間で完売したことから、少なくとも買い手側の関心は確認できます。ただし、購入希望が多いことと、ごみ全体が大きく減ることは同じではありません。人気が集まりやすい家電やアウトドア用品だけでなく、大型家具や傷のある品物まで安定して再利用できるかが次の課題です。

自分の地域で確認したい四つの項目

住民にとって重要なのは、制度の名前より、処分を決める前に使える選択肢が見えることです。

粗大ごみを申し込む前に、自治体の公式サイトで次の点を確認すると、再利用につながる可能性があります。

  1. 自治体が再生家具の展示・販売を行っているか
  2. 民間の買取サービスや地域掲示板との連携があるか
  3. 予約不要の持ち込み拠点が近くにあるか
  4. 大型品の訪問買取・回収に対応しているか

一方、自治体の取り組みを評価するときは、販売開始のニュースだけでなく、次回公表される実績を見る必要があります。

  • 年間で何点、何トンが再利用されたか
  • 回収した粗大ごみ全体のうち何%を救えたか
  • 選別、保管、配送を含む運営費はいくらか
  • 売れ残り率と、売れ残った品物の処理方法
  • 車を持たない人なども利用できたか

厚木市の公式ショップは、捨てられた物に再び値段を付ける入口をつくりました。7月31日に始まる持ち込み拠点が機能すれば、今度は「ごみになる前」に流れを変えられます。

次の注目点は、初回完売の勢いではありません。1年後に何トンの廃棄を避け、そのために誰がどれだけの費用と作業を負担したのか。そこまで公開されて初めて、ほかの自治体にも広げられる公共サービスなのかを判断できます。

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