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札幌で下水道使用料22.6%改定へ 払ったお金はどこへ行くのか

札幌市内で下水道設備を点検する作業員のイメージ。

札幌で下水道使用料22.6%改定へ 払ったお金はどこへ行くのか

札幌市は、2026年10月から下水道使用料を平均22.6%引き上げます。約30年ぶりの改定です。

値上げの中心的な理由は、日々の汚水処理に必要な収入が足りなくなることです。札幌市の試算では、2029年度に約227億円かかる汚水処理経費に対し、現行料金による収入は約185億円。約42億円の不足を埋め、経費回収率を100%にするため、今回の改定率が設定されました。

まず押さえたい点は次の4つです。

  • 下水道使用料は主に、汚水を集めて処理し、施設を維持する費用に充てられる
  • 大雨を排除する費用は、原則として税金などの公費が負担する
  • 札幌市では維持管理費が直近10年間で33%増えた
  • 今回の改定で収支を保てる見通しは2029年度までで、2030年度以降は再び厳しくなる
目次

札幌では何が変わるのか

新料金は2026年10月1日以降の使用分から適用されます。

札幌市は原則として2か月ごとに検針するため、改定前後にまたがる期間には経過措置があります。継続利用している世帯では、偶数月検針なら12月検針分、奇数月検針なら2027年1月検針分から新料金になる予定です。

改定率は全員一律に22.6%ではありません。平均で22.6%となるよう、基本使用料や排出量ごとの単価が組み直されています。

新しい早見表では、一般家庭が2か月に40立方メートルを使った場合、下水道使用料は税込3,564円です。水道料金7,304円と合わせると、請求額は10,868円となります。

自分の排出量は、検針時に届く「札幌市上下水道料金等のお知らせ」で確認できます。市のウェブサイトには、一般家庭用の早見表と計算表も用意されています。

下水道使用料は何に使われているのか

結論から言えば、使用料が支えているのは、家庭から流した水を川へ戻せる状態にするまでの一連の作業です。

汚水を集め、処理場まで運ぶ

台所、風呂、洗面所、トイレなどから出た汚水は、宅地内の排水設備から道路下の下水道管へ流れます。その後、必要に応じてポンプで送られ、水再生プラザと呼ばれる処理場へ到達します。

そのため、使用料は処理場だけでなく、次のような仕事にも関係します。

  • 下水道管の点検、清掃、修繕
  • ポンプ場の運転と保守
  • 処理場で使う電力や薬品
  • 処理設備の運転、点検、部品交換
  • 処理で発生した汚泥の脱水、焼却、運搬
  • 古くなった管路や機械設備の更新

札幌市の下水道管は約8,300キロに及び、処理施設は30か所あります。普及率は99.8%です。この大きな設備網を、排水量が増えない日も含めて常時動かし続けなければなりません。

きれいにした水を川へ戻す

処理場では、汚水に含まれる汚れを微生物などの働きで分解し、放流できる水質まで処理します。取り除いた汚れは汚泥となり、別の工程で処理されます。

つまり、下水道使用料は「流した水を運ぶ料金」だけではありません。感染症や悪臭を防ぎ、川や海の水質を守る費用まで含んでいます。

雨水対策は原則として税金で負担する

下水道には、生活排水を処理する仕事と、大雨をまちから排除する仕事があります。ただし、両者の費用負担は同じではありません。

国土交通省が示す原則は、「雨水公費・汚水私費」です。

  • 汚水処理:排水した利用者が下水道使用料で負担
  • 雨水対策:広く住民を浸水から守るため、税金などの公費で負担

高度処理や一部の施設整備のように、社会全体への便益が大きいものには公費が入る場合もあります。請求書に載る使用料だけで、下水道の全事業を賄っているわけではありません。

ここがポイント: 下水道使用料の主な役割は、家庭や事業所が流した汚水の処理費を負担することです。大雨から市街地を守る費用は、原則として税金側が担います。

なぜ節水しても値上げを避けにくいのか

最大の理由は、収入が水量に連動する一方、支出の多くは簡単に減らせないことです。

水を使う量が減れば使用料収入は下がります。しかし、下水道管、ポンプ場、処理場はそのまま残ります。流量が少し減っても、監視や点検をやめたり、管路を短くしたりはできません。

国土交通省によると、全国の下水道使用料収入は2017年度以降、減少傾向にあります。人口減少と節水機器の普及が収入を押し下げる一方、施設の更新需要と維持管理費は増えています。全国の事業の約4分の3では、汚水処理原価が使用料単価を上回る「原価割れ」の状態です。

札幌では老朽化の山がこれから来る

札幌市では、1972年の冬季オリンピックを契機に下水道整備が集中的に進みました。同じ時期に造られた設備は、更新時期も近い時期に重なります。

市は、直径2メートル以上で1994年度以前に設置された大口径管約185キロを調査し、必要な対策を進めています。古い管を放置すれば、漏水や道路陥没、排水障害につながるためです。

更新費を抑えるために工事を先送りすると、当面の支出は小さく見えます。しかし、劣化が進んでから緊急対応するほど、工事費や生活への影響が大きくなる可能性があります。

物価と電力価格も日々の処理費を押し上げる

処理場では大量の電力を使い、修繕には資材や人手が必要です。札幌市によると、下水道事業の維持管理費は直近10年間で33%増えました。

市はこれまでに、職員数を1997年度の683人から459人へ減らし、人件費も68億円から35億円へ圧縮しています。処理場の一部委託、ポンプ場の遠隔監視、電力契約の競争入札なども実施しました。

それでも不足が残りました。今回の値上げは、単に効率化をしていないから生じたものではなく、削減後の体制でも処理原価を回収できなくなった結果と見る必要があります。

値上げ率22.6%はどう決まったのか

札幌市は、2026年度から2029年度までの4年間を料金の算定期間としました。その最終年度に収支を均衡させ、汚水処理費を使用料で賄う「経費回収率100%」を達成するために必要な額を逆算しています。

2029年度の見込みは次の通りです。

  • 汚水処理経費:約227億円
  • 現行料金による使用料収入:約185億円
  • 不足額:約42億円
  • 必要な平均改定率:22.6%

市営企業調査審議会は2025年3月から8月にかけて審議し、同年の札幌市議会で条例改正案が議決されました。料金を決めるのは国ではなく、下水道を運営する自治体と、その条例を審議する地方議会です。

国は費用負担の原則や交付金制度、技術基準などを定めます。民間企業は工事、保守、施設運転などを受託します。住民と事業者は使用量に応じて料金を払い、議会や公開資料を通じて事業内容を検証する立場にあります。

「税金で補えばよい」という意見をどう見るか

値上げを巡っては、低所得世帯ほど負担感が重くなるとして、公費投入や減免制度を求める意見が札幌市議会でも示されました。物価高が続くなか、生活に欠かせないサービスの一律値上げに不安が出るのは自然です。

一方、汚水処理費をすべて税金で補えば、下水道を使っていない住民を含めて広く負担することになります。教育、福祉、防災など、一般会計が担うほかの行政サービスとの配分も問題になります。

議論すべきなのは「料金か税金か」の二択だけではありません。

  • 生活困窮世帯への減免を設けるか
  • 少量利用者と大量利用者の単価差をどうするか
  • 更新工事の優先順位を十分に公開しているか
  • 民間委託や広域連携で、さらに削減できる費用があるか
  • 雨水対策など公費で負担すべき部分が適切に分けられているか

使用料を上げる場合でも、誰にどれだけ負担を求め、何を維持するのかを具体的に示す必要があります。

自分の地域で確認したい3つの数字

札幌市のケースは、全国どこでも同じ値上げ率になるという話ではありません。人口密度、管路の長さ、地形、積雪、施設の建設時期によって処理原価は変わります。

自分の自治体の料金改定を判断するときは、次の数字を確認すると背景が見えやすくなります。

1. 経費回収率

汚水処理費を使用料でどれだけ賄えているかを示します。100%を下回っている場合、使用料以外の収入で不足を補っている状態です。

2. 管路や処理施設の老朽化率

古い施設が多いだけでなく、今後10年ほどの更新費がどこまで見積もられているかが重要です。事故後の緊急工事より、調査に基づく計画更新の方が生活への影響を抑えやすくなります。

3. 改定後の収支見通し

「今回上げれば何年間維持できるのか」を確認します。札幌市は2029年度までは収支均衡と経費回収率100%を維持できる見込みですが、2030年度以降は厳しいとの試算を示しています。

今回の改定で問題が終わるわけではありません。次の焦点は、値上げ後の収入が老朽管の更新や安定運転にどう使われたかを、市が毎年度の決算と整備実績で説明できるかです。

利用者側も、請求額だけでなく、経費回収率、更新した管路の長さ、事故や故障の発生状況を追う必要があります。2029年度までの4年間が、22.6%の負担増に見合う改善を確認する期間になります。

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