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スーパーが消えた街を「移動販売だけ」に任せない 郊外の買い物を支える3つの仕組み

郊外住宅地の集会所前で移動スーパーを利用する住民たち。

スーパーが消えた街を「移動販売だけ」に任せない 郊外の買い物を支える3つの仕組み

郊外住宅地で買い物に困る人が増える主因は、団地や駅前の店が撤退する一方、住民の高齢化とバスの減便が重なっていることです。店までの距離が同じでも、運転をやめたり、坂道を歩けなくなったりすれば生活圏は一気に狭まります。

移動販売は有力な対策ですが、車を走らせるだけでは続きません。自治体が需要を調べ、住民が停車場所と利用者をまとめ、事業者が採算の取れるルートを組む。この三者の分担が欠かせません。

この記事の要点は次の3つです。

  • 2020年の食料品アクセス困難人口は全国904万人で、65歳以上の25.6%
  • 郊外では「店舗撤退」「高齢化」「交通の弱体化」が同時に進む
  • 移動販売、移動支援、宅配を地域ごとに組み合わせる必要がある
目次

買い物困難は地方だけの問題ではない

店が多い都市圏でも、徒歩で使える店がなければ買い物は難しくなります。

農林水産政策研究所は、店舗まで直線距離で500メートル以上あり、自動車を利用できない65歳以上を「食料品アクセス困難人口」として推計しています。2020年は全国で904万人。65歳以上の25.6%に当たり、75歳以上に限ると566万人、31.0%でした。

ここで重要なのは、単なる「店の数」ではありません。農林水産省も、飲食料品店の減少や大型商業施設の郊外化に伴い、過疎地域だけでなく都市部でも問題が表面化していると説明しています。

郊外住宅地では、次の変化が重なります。

  • 団地内や駅前にあったスーパーが撤退する
  • 自家用車を使っていた世代が免許を返納する
  • 路線バスの減便で、店へ行く選択肢が減る
  • 坂道や荷物の重さが、往復の負担を大きくする
  • 単身世帯が増え、家族による送迎を頼みにくくなる

つまり、「近くに大型店がある」ことと「日常的に食料を買える」ことは別です。道路距離、坂、運行本数、本人の身体状況まで見なければ実態をつかめません。

店舗撤退後に起きるのは、食料不足だけではない

失われるのは商品の入手先だけでなく、外出と人に会う機会です。

相模原市緑区の相原当麻田地区では、2022年末と2023年秋に地域のスーパーが相次いで閉店し、生鮮食品を買える場所が乏しくなりました。住民からは、宅配やコンビニを使ったり、リュックを背負って遠方まで出かけたりしていたという声が上がりました。

自治会、地域ケア会議、市議会議員らが事業者との調整を重ね、2025年4月にイオン橋本店の移動販売が始まりました。初回には約600点が用意され、会計に列ができ、予定時間を30分以上超えたと地域紙が報じています。

住民の評価で目立ったのは、「実物を見て選べる」ことへの歓迎でした。一方、継続を望む声も出ています。これは裏返せば、初日の盛況だけでは将来の運行を保証できないということです。

ここがポイント: 買い物支援は福祉サービスであると同時に小売事業です。必要性が高くても、利用者数と売上が足りなければ民間事業者だけで運行を維持するのは難しくなります。

移動販売を続けるには「役割分担」が要る

自治体の役割は店を経営することではなく、需要と場所と事業者をつなぐことです。

自治体は困っている場所を特定する

高齢化率や店舗までの距離だけでなく、バスの本数、坂道、免許返納者、既存宅配の利用状況を重ねて見る必要があります。住民アンケートも有効です。

足立区の千住桜木二丁目では、地域包括支援センター、自治会、住民、民生委員が団地住民にアンケートを実施。その結果を基に移動スーパーを試し、2026年1月の初回には近隣を含む約30人が利用しました。

住民側は停車場所と利用を支える

移動販売車は、どこにでも停められるわけではありません。取手市では地区集会所などの場所を無償で提供することを要望の前提とし、車両スペースや道路幅によっては対応できないと案内しています。

埼玉県松伏町も、販売場所の主な条件として次を挙げています。

  • 複数人の利用が見込めること
  • 車2~3台分の駐車スペースがあること
  • 車両が安全に出入りできること

松伏町では2023年8月から移動販売を行い、2026年7月に一部ルートと販売時間を変更しました。販売場所を固定したままにせず、利用状況に合わせて見直すことが継続の鍵になります。

事業者には採算を確保できるルートが必要

1カ所の利用者が少なくても、複数地点を効率よく回れば運行できる場合があります。ただし、燃料、人件費、車両維持、冷蔵設備には費用がかかります。

豊田市は2025年度、山村地域で行う移動販売、買い物代行、無人販売、宅配を補助対象とし、燃料費や車両維持費、人件費などの50%以内、上限150万円を支援しました。これは、公費が事業者の赤字を無期限に埋める仕組みではなく、地域に必要なサービスが立ち上がり、継続できるよう条件を整える施策です。

「販売車を呼ぶ」以外の選択肢も組み合わせる

地域によっては、人を店へ運ぶ方が効率的です。

対策は大きく3方向に分けられます。

  • 商品を届ける:移動販売、共同配送、宅配、買い物代行
  • 人を店へ運ぶ:乗合タクシー、送迎、路線バスとの接続
  • 近場の販売拠点を残す:小型店、無人販売、空き店舗の活用

移動販売には、商品を手に取れることや近隣住民が顔を合わせられる利点があります。一方で、訪問は週1回、滞在は十数分という地域もあり、時間が合わない就労世帯や品ぞろえを重視する人には十分ではありません。

宅配は自宅で受け取れますが、注文方法や最低購入額、配送料が壁になることがあります。送迎は大型店を利用しやすい一方、運転手の確保や予約の手間が課題です。

したがって、全地域に同じ方式を広げるのではなく、誰が、いつ、何を買えずにいるのかを確かめて組み合わせるべきです。

次に見るべきは「利用者数」より継続条件

買い物支援の成否は、開始式の盛況ではなく、1年後も必要な人が使えているかで判断すべきです。

自治体や住民が確認したいのは、次の点です。

  • 停車場所まで歩けない人が取り残されていないか
  • 曜日や時間が利用者の生活に合っているか
  • 生鮮食品など必要な品目がそろっているか
  • 1カ所当たりの売上と運行費を維持できるか
  • 販売員、運転手、地域の調整役を確保できるか
  • 移動販売が休止した場合の代替手段があるか

近所の店が閉じてから対策を探し始めると、代替サービスの開始まで空白が生まれます。自治体が店舗、交通、高齢化の変化を継続的に把握し、撤退の兆候が見えた段階で住民と協議を始められるか。そこが、郊外住宅地の生活圏を守る次の分岐点です。

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