札幌の路線バス、30円値上げで減便は止まるのか――2027年4月予定の運賃改定を読む|2026年7月14日版
札幌市内の路線バス5社は、2027年4月1日から均一運賃を30円引き上げる予定だ。240円区間は270円、270円区間は300円になる。値上げの狙いは、運転手の賃上げなど待遇改善の原資をつくり、減便・廃止を抑えることにある。
ただし、利用者の負担が増えれば済む話ではない。通勤・通学、通院、雪の時期の移動を支えるバスで、値上げ分が運転手確保と便数の維持にどう結び付いたかを見える形で検証できるかが問われる。
- 改定予定日:2027年4月1日
- 対象:札幌市内を走る路線バス5社
- 均一運賃:240円→270円、270円→300円
- 目的:運転手の待遇改善と、減便・廃止の抑制
何が変わるのか
札幌市は7月1日、協議運賃部会での協議を踏まえ、運賃改定の内容を公表した。対象となるのは、札幌ばんけい、ジェイ・アール北海道バス、じょうてつ、北海道中央バス、夕張鉄道の5社だ。
今回の改定では、特殊1区が240円から270円へ、特殊2区が270円から300円へ上がる。定期券と回数券は、この改定額を基に各社が算出する。
毎日往復で使う人にとっては、小さくない差額になる。例えば片道240円の区間を平日に往復する場合、1乗車当たり30円の増額なので、月20日利用なら単純計算で月1,200円の負担増となる。
一方で札幌市は、改定後2年を目途に効果を検証し、社会経済情勢の変化に応じて再改定の必要性も検討するとしている。これは一度の値上げで完結する対策ではなく、運行を支える人材と収支を継続的に見直す枠組みだ。
値上げの理由は「燃料費」だけではない
核心は運転手不足にある。
札幌市の資料によると、市内バス3社の運転手在籍数は、2020年度の1,818人から2024年度には1,526人へ減った。5年間で292人減少した計算になる。運行便数も2019年度の9,456便から2025年度速報値では6,600便まで落ち込んでいる。
2024年12月の前回改定後、待遇改善によって採用と退職の差は一時的に改善したものの、過去の減少を埋める水準には届かず、減便も続いた。市が今回の改定を「運賃を上げるため」ではなく「働き手を確保するため」と位置付ける理由はここにある。
増収分はどこへ向かうのか
市の試算では、30円の引き上げによる年間増収見込みは約12億5,200万円。このうち大部分を待遇改善に充て、3社平均の運転手年収を、改定前の483万円から521万円へ引き上げる想定を示した。
内訳は、定期昇給・ベースアップなどの賃上げが60%、手当の拡充が30%、職場環境の改善が10%とされる。
ただし、これはあくまで事業者への聞き取りに基づく試算であり、全産業平均の527万円にはなお届かない。運賃収入の増加が人材流出をどこまで止められるかは、実施後の採用数、離職数、便数で確かめる必要がある。
ここがポイント: 30円の値上げは、乗客にとっては運賃負担の増加だが、制度の成否は「その30円で実際に運転手が増え、便が残るか」で決まる。
利用者の受け止めは「条件付きの容認」
札幌市が4月28日から5月27日に実施した住民アンケートには2,203件の回答があり、77%が値上げを容認した。
ただし、これは無条件の賛成ではない。自由記述では、値上げをやむを得ないとしつつも、減便や廃止を避けてほしい、運転手の待遇改善に確実につなげてほしい、定期券や割引制度も見直してほしいという声が挙がった。
反対意見には、物価高で家計が厳しいことや、税金をより投入して路線を守るべきだという考えがあった。特に利用頻度が高い人ほど反対の割合が上がり、19歳以下、20代、75歳以上でも反対の割合が他の年代より高い傾向が示された。
この差は、バスを「たまに使う移動手段」と見るか、「代わりの利かない生活の足」と見るかで、値上げの重さが変わることを表している。
次に確認したい3つのこと
値上げの実施までには、各事業者が北海道運輸局へ届出を行う予定だ。利用者が見るべきなのは、運賃表だけではない。
- 定期券・割引制度の扱い:通学、通勤、高齢者・障害者向けの制度で負担がどう変わるか。
- 待遇改善の実績:賃上げや手当拡充が、求人・採用・離職の数字にどう現れるか。
- 減便の推移:雪の時期も含め、生活に必要な路線と時間帯が維持されるか。
札幌市は路線バス運転手の職業PRや養成に向けた情報発信も進めている。しかし、求人の周知だけで担い手不足は解けない。2027年4月以降、運賃を負担する利用者に対して、各社と市が「どの路線を、どの水準で守れたのか」を具体的な数字で示せるか。それが次の焦点になる。
