マダガスカルの電力公社Jiramaはなぜ一斉摘発に動いたのか 停電の裏で進む「不正接続」対策の本気度
マダガスカルでいま起きているのは、単なる料金未払い対策ではありません。国営の水道・電力会社Jiramaは2026年3月、「不正状態の利用者が正規契約の利用者より多い」とまで踏み込み、電力の不正接続や異常メーターの一斉摘発を正当化しました。
結論から言えば、この動きは「停電を減らしたいのに、そもそも電気が正しく売れていない」という構造問題への荒っぽい是正策です。利用者側には追徴請求や契約見直しの負担が出る一方、Jirama側も設備不足と慢性的な停電を抱えており、摘発だけで状況が一変する段階ではありません。
- 3月21日、Jiramaは不正利用が大規模だとして摘発継続を表明
- 同社によると、こうした不正で年3000億アリアリの損失が出ている
- 1月に予告、2月に3か月の摘発作戦を開始し、初日だけで18件の不正・異常を確認
- ただし4月に入ってもJiramaは計画停電情報を出しており、供給不安は続いている
何が起きたのか
3月21日付の現地メディア2424.mgによると、Jiramaは「利用者の適正化作戦」を後退させない姿勢を示しました。根拠として挙げたのが、不正状態の利用者が正規利用者より多いという厳しい認識です。
Jiramaが問題視しているのは、露骨な盗電だけではありません。
- 不正な引き込み線やメーター改ざん
- 技術的に異常があるのに、そのまま長期間使い続けるケース
- 本来の使用量に見合わないごく少額の支払いで済んでいた契約
同社は、こうした状態が送配電網の想定外負荷を生み、頻繁な故障、停電、変圧器の爆発まで招いていると説明しています。つまりJiramaにとって今回の摘発は、売上確保だけでなく、設備保全の問題でもあるという整理です。
ここがポイント: マダガスカルの今回の話は「料金回収の厳格化」ではなく、脆弱な送配電網に不正接続が重なり、停電そのものを悪化させているという順番で見ると実態がつかみやすいです。
なぜここまで強硬なのか
背景には、Jiramaの弱い経営体力があります。
IMFの2025年リポートは、マダガスカルの電力接続率が36%にとどまり、Jiramaが高い送配電ロスと採算割れの料金体系を抱えていると指摘しました。世界銀行も、頻繁な停電が家庭生活と企業活動の両方を妨げていると説明しています。
この土台の上に不正利用が広がれば、Jiramaにとっては二重苦です。
1. 売ったはずの電気が現金にならない
Jiramaは3月時点で、不正や異常利用による損失を年3000億アリアリと説明しました。国営企業としては無視できない規模です。燃料調達、部品更新、変圧器増設に回るはずの資金が細るため、停電対策そのものが遅れやすくなります。
2. 設備が「契約外の需要」を抱え込む
不正接続は、計画していない場所に負荷がかかることを意味します。利用者数や消費量を前提に組んだ配電設計が崩れれば、変圧器や配線の故障が増えるのは自然です。
3. 政府・国際金融機関から改革圧力がある
Jirama改革は、IMFや世界銀行の文書でも繰り返し重点課題として扱われています。財政負担の軽減と供給の安定化を同時に求められている以上、経営陣が「まず漏れている電気を止める」と考えるのは不思議ではありません。
利用者には何が変わるのか
ここが生活者にとって最も重い部分です。Jiramaは、異常メーターを見つけた場合、利用者に遡及的な使用量請求を求める考えを示しています。
ただし線引きはあります。
- 契約上、利用者にはメーター異常をすぐ申告する義務がある
- 申告せず使い続けた場合は、追徴対象になりやすい
- 逆に、異常を申告していた利用者には請求計算で軽減を認める
- 修理の遅れはJirama側の責任だと同社自身も説明している
この整理は一見もっともですが、現場では揉めやすい論点でもあります。利用者から見れば「故障なのか不正なのか」「いつから誰の責任なのか」が曖昧になりやすいからです。
すでに摘発は始まっている
今回の強硬姿勢は口先だけではありません。Jiramaの暫定トップは2026年1月20日、不正接続と電力窃盗を狙った摘発作戦を予告し、関与した世帯や社内職員に1週間の猶予を与えると表明しました。
その後、2月4日には3か月間の作戦初日の結果が報じられ、109個のメーターを点検して18件の不正・異常が見つかったとされています。内訳には、追加鑑定が必要な案件7件、明確な盗電1件、操作痕が疑われる案件も含まれていました。
数字そのものより重要なのは、Jiramaがこの件を「例外的な摘発」ではなく、一定期間続ける運用に切り替えたことです。
それでも停電はすぐには消えない
ここは期待しすぎない方がいい部分です。Jiramaの公式サイトには2026年4月3日から9日の計画停電情報が掲載されており、供給不安がなお日常業務の一部になっていることが分かります。
つまり現状は、
- 不正利用の整理
- 故障設備の更新
- 発電能力の底上げ
- 配電網の補修
この4つを同時に進めないと改善しません。
不正摘発は必要でも、それだけで停電がなくなるわけではない。ここを読み違えると、Jiramaの発表も利用者の反発もどちらも見誤ります。
日本から見ると何が重要か
日本では電力メーターの異常や盗電がここまで大規模な社会テーマとして前面に出ることは多くありません。だからこそ、マダガスカルのニュースは「設備が弱い公共サービスで、契約秩序の崩れがそのまま供給不安に跳ね返る」例として見ておく価値があります。
特に注目したいのは、国営インフラ企業の改革が、料金論や経営論だけで終わらず、
- 家庭の追徴請求
- 商店の営業継続
- 水道・電力の同時不安
- 修理遅延の責任分担
といった生活の細部にそのまま落ちてくる点です。
今後の注目点
- Jiramaが摘発件数や回収額を継続的に公表するか
- 追徴請求をめぐる利用者との紛争が増えるか
- 不正対策と並行して、停電時間や故障件数が実際に減るか
次に見るべきなのは、摘発の強さではなく、正規契約者にとってサービスが本当に良くなったかです。そこが変わらなければ、今回の作戦は「取り締まりは厳しいのに停電は減らない」という不信だけを残しかねません。
参照リンク
- 2424.mg: ENERGIE – Les usagers en situation irrégulière plus nombreux que les abonnés en règle, selon la Jirama pour justifier son opération de ratissage
- 2424.mg: ENERGIE – Le DG par intérim de la Jirama annonce une opération de ratissage pour traquer les vols d’électricité
- 2424.mg: Jirama : 18 irrégularités détectées dès le premier jour de ratissage
- JIRAMA: Prévisions de coupures du 03 au 09 avril 2026 venant de la Direction RIA
- IMF: The Electricity Sector and Jirama: Republic of Madagascar
- World Bank: Madagascar: Leveling the Playing Field for Equitable and Resilient Growth Across Key Sectors
