久留里線の一部廃止で地域の足はどう変わるか|2026年6月23日版
千葉県のJR久留里線で、久留里駅から上総亀山駅までの9.6km区間を鉄道として残すのではなく、バスなどを中心にした交通へ移す方針が固まっています。予定どおりなら、2027年4月にこの区間の鉄道営業は終わる見通しです。
これは単なるローカル線の廃止ではありません。通学、通院、買い物、観光地への移動を、列車の時刻表から地域の実際の移動需要に合わせ直す話です。
- 対象はJR久留里線のうち、久留里―上総亀山間の9.6km
- 2023年度の平均通過人員は64人/日まで減少
- JR東日本千葉支社は、バスなどを中心とした新たな交通体系への移行が必要だと説明
- 今後の焦点は「鉄道の代替」ではなく、住民が使いやすい移動手段を作れるか
何が決まっているのか
久留里線は木更津駅と上総亀山駅を結ぶ32.2kmの非電化路線です。議論の中心になっているのは、終点側の久留里―上総亀山間です。
鉄道チャンネルが2024年11月に報じた内容によると、JR東日本千葉支社はこの区間について、鉄道を廃止し、バスなどを中心とした新たな交通体系へ移る方針を示しました。背景には、利用者の大幅な減少があります。
同記事では、平均通過人員が1987年度の823人/日から、2023年度には64人/日まで減ったとされています。列車を走らせるには線路、車両、保守、運転士、駅設備が必要です。利用がここまで細ると、鉄道の「大量輸送」という強みが発揮しにくくなります。
対象区間を整理すると
- 路線全体: 木更津―上総亀山、32.2km
- 廃止方針の区間: 久留里―上総亀山、9.6km
- 関係する主な自治体: 千葉県、君津市、木更津市、袖ケ浦市
- 生活への関係: 通学、通院、買い物、観光、免許返納後の移動
ここがポイント: 問われているのは「鉄道かバスか」の好みではなく、人口が減る地域で、限られた運転手・予算・利用者数を前提に、誰が毎日使える交通を残すかです。
なぜ生活ニュースとして重要なのか
鉄道がなくなると聞くと、まず「不便になる」という反応が出ます。それは自然です。駅は地域の目印であり、列車の時刻は暮らしのリズムにもなります。
一方で、1日に乗る人が少ない区間では、列車の本数を増やすことが難しく、駅から目的地までの移動も別に必要になります。病院、スーパー、学校、観光施設が駅前だけに集まっていない地域では、鉄道が残っていても「最後の数キロ」が壁になります。
だから今回の論点は、次の3つに分かれます。
- バスや乗合交通が、列車より細かく集落や施設を結べるか
- 高齢者や学生が、予約や乗り換えで困らない仕組みにできるか
- 観光客にも分かる案内、時刻、決済方法を用意できるか
JR東日本側は、デジタル技術を使った経路案内や観光情報の提供にも触れています。ただし、アプリや案内だけで交通は便利になりません。実際の本数、停留所の位置、運賃、予約のしやすさがそろって初めて、住民の足になります。
受け止めは割れている
ネット上や報道の見出しでは、廃止方針に対して「いきなり廃線」と受け止める声も紹介されています。鉄道を残したい人にとって、地域の歴史や風景が失われる感覚は小さくありません。
ただ、反対の声だけで整理すると見誤ります。利用者が減った現実、運転士不足、保守費用、自治体の財政負担も同時にあります。残すなら誰が支えるのか。変えるなら誰が不便を被らないようにするのか。そこを具体化しないと、議論は感情論で止まります。
今回の久留里線は、都市近郊の千葉県内で起きている点も重いところです。過疎地だけの話ではなく、首都圏の外縁でも、鉄道を毎日の移動手段として維持できる区間と、別の交通に組み替える区間が分かれ始めています。
今後見るべき点
2027年4月に向けて、読者が注目すべきなのは廃止日そのものより、代替交通の中身です。
- 朝夕の通学時間帯に十分な便があるか
- 通院や買い物に使える昼間の便が残るか
- 駅から遠い集落を拾えるルートになるか
- 観光客が木更津方面から迷わず乗り継げるか
- 現金以外の支払い、予約、案内が高齢者にも使いやすいか
鉄道の廃止は終点ではありません。地域交通としては、ここからが本番です。久留里―上総亀山間で住民が実際に使う移動手段を作れるかどうかは、同じ悩みを抱える各地のローカル線にもそのまま跳ね返ります。
