福岡県の賃貸相談が約49%増 退去費用・家賃値上げ通知で確認すべきこと|2026年7月28日版
福岡県消費生活センターに寄せられた「不動産貸借」の相談が、2025年度に788件へ増えました。前年度の529件から259件増、率にすると約49%の増加です。
目立つのは、賃貸住宅の退去時に請求される高額な原状回復費用と、突然届く家賃値上げの通知です。通知や請求を受けても、その場で承諾せず、まず契約書と費用の根拠を確認することが重要です。
- 福岡県消費生活センターの相談総数は11,320件で、前年度比13.0%増
- 20~40歳代では「不動産貸借」が分類別で最多
- 通常使用による傷みは、原則として借主負担ではない
- 納得できない請求や説明不足があれば、支払う前に消費生活センターへ相談する
不動産貸借の相談が529件から788件へ
福岡県が2026年7月17日に公表した集計によると、県消費生活センターが2025年度に受け付けた相談は11,320件でした。前年度より1,303件増えています。
県と市町村の相談窓口を合わせると53,371件で、前年度比5.5%増です。県内だけでも、商品や契約をめぐる相談が年間5万件を超えています。
そのなかで変化が大きかったのが不動産貸借です。
- 2024年度:529件
- 2025年度:788件
- 増加数:259件
- 増加率:約49%
相談内容として県が挙げたのは、「退去時に高額な原状回復費用を請求された」「突然、家賃を値上げするとの通知が届いた」といった事例です。
また、年代別の商品・サービス分類では、20歳代、30歳代、40歳代のすべてで不動産貸借が最多となりました。進学や就職、転勤、結婚などで賃貸契約に触れる機会が多い世代にとって、例外的な問題ではありません。
退去時の請求は「元どおりにする費用」の全額ではない
原状回復という言葉から、入居時と同じ新品の状態に戻す費用を借主がすべて負担すると思われがちです。しかし、国土交通省のガイドラインと国民生活センターの案内は、そうした考え方を採っていません。
年月の経過による劣化や、普通に暮らしていて生じる汚れ・傷みの修繕費は、原則として借主が負担する必要はないとされています。一方、借主の不注意や通常とはいえない使い方で生じた損傷は、負担の対象になり得ます。
ここがポイント: 「原状回復」は、部屋を新品に戻すことではありません。請求書を受け取ったら、損傷箇所、修繕範囲、単価、経過年数、契約上の特約を分けて確認する必要があります。
契約書の特約も確認する
ハウスクリーニング代などについて、契約書に特約が設けられている場合があります。国民生活センターは、費用負担に関する特約があり、その内容について明確な合意がある場合には、原則として特約に従うと説明しています。
ただし、請求額に納得できないときは、すぐに支払うのではなく、貸主や管理会社へ次の情報を求めましょう。
- 請求対象となった傷や汚れの場所
- 修繕内容と費用の明細
- 借主負担と判断した契約条項
- 入居年数や設備の経過年数をどう考慮したか
- 敷金との精算内容
「一式」とだけ記された請求書では、負担が妥当か判断できません。項目別の説明を受け、国土交通省のガイドラインと照らし合わせることが出発点になります。
入居時の写真が退去時の重要な記録になる
退去時の争いを減らすには、入居した日の記録が役立ちます。国土交通省は、入居時と退去時に貸主・借主双方で物件を確認し、チェックリストや写真を利用する方法を示しています。
撮影するなら、部屋全体だけでなく、既存の傷や変色が判別できる距離でも残します。
- 壁紙、床、建具の傷や汚れ
- 水回りの変色や設備の不具合
- 撮影日が確認できる元データ
- 管理会社へ不具合を連絡したメールやメッセージ
- 入居時の確認票と契約書
入居後に水漏れや設備故障を見つけた場合も、放置せず早めに貸主側へ連絡します。いつ発生し、いつ報告したのかが残っていれば、退去時の責任範囲を整理しやすくなります。
家賃値上げの通知にも即答しない
今回の福岡県の集計では、突然の家賃値上げ通知も相談例に挙げられました。ただし、通知が届いたという事実だけで、提示された金額や開始時期を直ちに受け入れる必要があるとは限りません。
まず確認したいのは次の点です。
- 現在の契約期間と更新時期
- 契約書にある賃料改定の条項
- 値上げ額と開始予定日
- 値上げ理由として示された税負担、維持費、周辺相場などの根拠
- 同意を求める通知なのか、決定事項としての通知なのか
口頭だけで返答を求められた場合は、内容を書面やメールでもらいましょう。疑問点を整理し、必要に応じて消費生活センターや法律相談につなぐことで、根拠が分からないまま判断する事態を避けられます。
相談件数の増加に窓口が対応できるか
相談が増える一方、相談を受ける側の体制も課題です。福岡県弁護士会は2025年の声明で、2023年時点の県内の消費生活相談員数が人口10万人当たり2.3人で、全国平均の2.7人を下回ると指摘しました。相談員1人当たりの対応件数は411.2件で、全国平均の300.3件を上回っていました。
今回公表された県センターの相談件数は、そこからさらに増えています。賃貸、通販、定期購入、点検商法など相談分野が広がるなか、身近な窓口を維持できるかは、消費者被害を早期に止めるうえで重要です。
請求や通知を受けたときの実践手順
賃貸住宅のトラブルでは、支払いや同意を急がず、記録をそろえることが第一歩です。
- 契約書、重要事項説明書、請求書、通知を保存する
- 入退去時の写真や管理会社との連絡履歴を確認する
- 費用や値上げの根拠を文書で求める
- 回答期限がある場合も、納得できない点を伝えて即答を避ける
- 解決しない場合は、最寄りの消費生活センターへ相談する
福岡県消費生活センターは電話と来所で相談を受け付け、メール相談の窓口も設けています。県外でも、全国共通の消費者ホットライン「188」から最寄りの相談窓口につながります。
次に見るべき数字は、不動産貸借の相談増加が2026年度も続くのか、そして退去費用と家賃改定のどちらが増加を押し上げているのかです。借主にとっては、入居時の記録を残し、請求や通知の根拠を確認してから判断することが、今すぐできる備えになります。
