中露艦艇が日本のEEZを航行、中国駆逐艦は射撃訓練 何が問題なのか|2026年7月21日版
中国とロシアの海軍艦艇4隻が沖ノ鳥島の南西を航行し、そのうち中国海軍のミサイル駆逐艦1隻が日本の排他的経済水域(EEZ)内で機関銃による射撃訓練を実施したことが確認されました。
直ちに日本の領海が侵犯されたという話ではありません。重要なのは、中露艦艇が共同で日本周辺を航行するなか、武器を使う訓練まで確認され、日本側が警戒・監視を続ける必要性が一段と高まった点です。
- 確認されたのは中国・ロシアの海軍艦艇計4隻
- 7月19日、沖ノ鳥島南西の海域を航行
- 射撃したのは中国海軍のミサイル駆逐艦1隻
- EEZは領海ではないため、「侵入」だけで違法とは断定できない
何が起きたのか
防衛省統合幕僚監部によると、7月19日に中国とロシアの海軍艦艇計4隻が沖ノ鳥島の南西を航行しました。このうち中国海軍のミサイル駆逐艦が、日本のEEZ内で機関銃による射撃訓練を実施しました。
小泉進次郎防衛相も訪問先の英国で、中露艦艇が日本周辺で共同航行を行い、週末には日本のEEZ内で実弾演習を実施したと説明しています。防衛省は射撃訓練の様子を撮影した画像も公開しました。
今回の事実関係は、次のように分けて理解する必要があります。
- 中露両国の艦艇がまとまって航行していた
- 実際に機関銃を射撃したと確認されたのは中国の駆逐艦
- 場所は日本の領海ではなくEEZ
- 防衛省は海上自衛隊の艦艇などによって警戒・監視した
「中露4隻がすべて射撃した」という発表ではありません。共同航行の途中で、中国艦艇による射撃が確認されたというのが正確な整理です。
EEZ内での射撃は領海侵犯と同じではない
ここはニュースを読むうえで最も注意したい点です。
EEZは、沿岸国が天然資源の探査・開発・保存・管理などについて主権的権利を持つ海域です。日本の領土そのものでも、領海と同じ海域でもありません。国連海洋法条約では、他国にもEEZ内で航行などの自由が認められています。
一方、他国は沿岸国の権利や義務に「妥当な考慮」を払う必要があります。軍事演習を含む活動をどこまで認めるかについては各国の立場に違いがあり、活動の内容、安全確保、事前の情報提供などが問題になります。
ここがポイント: 今回の焦点は「EEZに入ったことだけで直ちに違法か」ではなく、日本周辺で中露の共同航行が続くなか、実弾を使う訓練まで行われたことが安全保障上どのような意味を持つかです。
「日本のEEZだから外国軍艦は航行できない」「EEZでの射撃は領海侵犯だ」と単純化すると、領海とEEZの違いを見失います。ただし、法的評価が領海侵犯とは異なるからといって、日本が安全面の懸念を軽視してよいわけでもありません。
なぜ今回の動きが重要なのか
単独の艦艇による一度きりの航行として見るだけでは、今回の意味を十分に捉えられません。
中露の協力が共同運用へ近づいている
中国とロシアは7月上旬、「海上聯合2026」と呼ぶ合同海軍演習を実施しました。中国側は、この演習を両軍の年間協力計画に基づくものと説明しています。
防衛研究所の「中国安全保障レポート2026」によると、中露は2010年代から合同海軍演習を重ね、共同指揮や対潜水艦戦、掃海、臨検など訓練内容を広げてきました。近年は演習後の共同航行も定着しています。
つまり今回の航行は、艦艇が偶然同じ海域にいたのではなく、両国が遠方で一緒に動く能力を継続的に示す流れの一部として見る必要があります。
日本周辺で海と空の活動が重なっている
6月27日には、中国とロシアの軍用機が日本海、東シナ海、西太平洋の上空で共同飛行を実施したと中国側が発表しました。海軍だけでなく空軍でも共同活動が続いています。
日本側にとって負担になるのは、一つの方向だけを見ればよい状況ではなくなることです。
- 日本海、東シナ海、西太平洋をまたぐ航空活動
- 南西諸島や沖ノ鳥島周辺を通る艦艇の動き
- 演習後も続く長距離の共同航行
- 射撃、対潜水艦戦など訓練内容の高度化
海上自衛隊と航空自衛隊には、複数海域で継続的に情報を集め、艦艇や航空機の動きを識別する態勢が求められます。監視が長期化すれば、人員、艦艇、航空機の運用にも影響します。
日本社会への影響はどこに表れるか
今回の射撃訓練によって、一般の生活が直ちに制限されたとの発表はありません。それでも、中長期的には防衛政策や予算、海上交通の安全をめぐる議論に関係します。
防衛力整備と国際協力
小泉防衛相は英国での講演で、日本が同盟国・同志国をつなぐ防衛協力の拠点となる考えを示しました。また、英国、イタリアと進める次期戦闘機の共同開発や、防衛産業の中長期的な戦略にも言及しています。
中露の連携強化は、日本が米国だけでなく、英国やイタリアなど欧州諸国との協力を深める理由の一つになります。その結果は、防衛装備の共同開発、部品供給網の整備、防衛費の配分といった具体的な政策に表れます。
船舶や漁業への情報提供
武器を使う訓練では、周辺を航行する船舶の安全確保が欠かせません。今後、同様の活動が繰り返される場合は、日本政府が訓練の時期や範囲をどこまで事前に把握できたか、民間船や漁業者に必要な情報が届いたかも重要な確認事項になります。
不安を必要以上に広げないためにも、政府には艦艇の数、位置、射撃内容、日本側の対応を可能な範囲で具体的に公表することが求められます。
今後見るべき3つの論点
今回の発表だけで中露の次の行動を断定することはできません。注目すべきなのは、単発の出来事で終わるか、活動の常態化や高度化につながるかです。
- 共同航行の行き先:4隻が今後どの海域を通り、どの程度の期間行動するのか
- 訓練内容の変化:機関銃射撃にとどまるのか、より複雑な共同訓練が確認されるのか
- 日本政府の対応:中国・ロシアへの意思伝達、安全確保の要請、監視結果の公表をどう進めるのか
ネット上ではEEZを領海と同じものとして受け止める反応も起こりやすいテーマです。情報を見る際は、「どの艦艇が射撃したのか」「領海とEEZのどちらなのか」「政府がどの行為を問題視しているのか」を切り分ける必要があります。
次の判断材料になるのは、防衛省が公表する中露艦艇のその後の航路です。射撃そのものに加え、共同航行が日本周辺でどこまで日常的な活動になるのかを追う必要があります。
