豪州の16歳未満SNS禁止、3カ月で見えた「抜け道」と規制強化|2026年6月26日版
オーストラリア政府は、16歳未満のSNS利用禁止をさらに強める方向に動いています。理由ははっきりしています。世界初級の年齢制限を始めたものの、若者の利用は大きく減っていないからです。
AP通信によると、アンソニー・アルバニージー首相は議会で制度強化を検討していると説明しました。問題は「子どもを罰する法律」ではなく、Instagram、TikTok、YouTube、Facebookなどのプラットフォームに、年齢制限を本当に実行させられるかです。
- 16歳未満のSNSアカウント保有を禁じる制度は、2025年12月に施行
- 違反した企業には最大4,950万豪ドルの罰金リスク
- ただし調査では、禁止後も多くの10代がSNSを使い続けている
- 英国など、同様の規制を検討する国にとっても実験台になっている
何が起きているのか
焦点は、法律の理念ではなく実効性です。
オーストラリアは、16歳未満が主要SNSにアカウントを持つことを禁止しました。対象にはFacebook、Instagram、YouTube、TikTokなどが含まれます。政府は、保護者や子ども本人を罰するのではなく、企業側に「合理的な措置」を求める設計を採っています。
しかし、AP通信は、規制開始後も未成年ユーザーの多くがアカウントを維持していると報じました。罰金の上限は重い一方で、どの程度の対策をすれば企業が責任を果たしたことになるのかは、実務上の争点として残っています。
ここで重要なのは、制度が失敗したと単純に切り捨てることではありません。年齢制限を法律で決めても、本人確認、端末、アプリストア、学校や家庭の使い方がそろわなければ、現場では簡単にすり抜けが起きるという点です。
調査で見えた「禁止しても使える」現実
英ガーディアンは、ニューカッスル大学の研究として、禁止後3カ月の時点でも16歳未満の多くがSNSを使っていたと報じています。
特に目を引くのは、年齢確認の弱さです。記事によると、年齢確認を求められた若者は一定数いたものの、実際に公的身分証の提出まで求められた割合は低く、自己申告や自撮りによる確認が多かったとされています。
すり抜けは特別な技術ではない
若者が使った方法は、専門的なハッキングではありません。
- 年齢を偽って登録する
- 別アカウントを作る
- ブラウザや端末を変える
- VPNなどで場所の判定を避ける
こうした方法は、家庭でも学校でも完全には見えません。規制当局が企業に強い措置を求めても、アカウントを作る画面、本人確認サービス、端末側の年齢設定がばらばらなら、子どもは隙間を見つけます。
ここがポイント: オーストラリアの制度は「SNSを禁止するかどうか」だけでなく、「誰が年齢を確認し、誰が責任を負い、どこまで個人情報を集めるのか」を問う段階に入っています。
政府が強化したい理由
アルバニージー政権が制度強化に動く背景には、二つの圧力があります。
一つは、子どものメンタルヘルスや有害コンテンツへの懸念です。SNS企業のアルゴリズムが、若者をより刺激の強い投稿へ誘導するという批判は各国で続いています。
もう一つは、規制が空回りしているように見えることへの政治的な圧力です。法律を作ったのに、10代がほぼ以前と同じように使えているなら、政府は「企業に任せたが不十分だった」と説明せざるを得ません。
ただし、強化には副作用もあります。
- 本人確認を厳しくすると、子どもだけでなく大人も身分証や顔画像の提出を求められる可能性がある
- プライバシー保護と安全対策の線引きが難しくなる
- SNSから排除された若者が、より監視の薄いサービスへ移る懸念がある
- 家庭のルール作りが、政府と企業の技術的判断に置き換わりやすい
つまり、規制強化は「安全になる」だけでは終わりません。子どもの安全、表現の自由、個人情報、企業責任が同じ画面上でぶつかります。
日本から見ると何が参考になるか
日本でも、未成年のSNS利用、闇バイト、性的搾取、いじめ、長時間利用への懸念は続いています。ただ、オーストラリア型の一律禁止をそのまま移すと、同じ壁にぶつかります。
見るべき点は、年齢の線引きそのものよりも次の三つです。
1. 規制対象をどこまで広げるか
SNSだけを対象にしても、子どもは動画、ゲーム、チャット、配信サービスを横断して使います。オーストラリアでも、どのサービスを対象にするかは制度運用の中心問題です。
2. 年齢確認を誰が担うか
アプリごとに確認するのか、OSやアプリストアで年齢情報を扱うのか。ここが決まらないと、企業ごとの対応にばらつきが出ます。一方で、年齢確認を集中させれば、個人情報が一カ所に集まるリスクも高まります。
3. 子どもを「締め出す」以外の手段
夜間利用の制限、知らない相手との接触制限、レコメンド機能の透明化、通報対応の迅速化など、アカウント禁止より細かい対策もあります。実際の生活では、完全禁止よりも、危険な機能を狙って制限する方が効く場面があります。
今後の注目点
オーストラリアの制度は、まだ途中段階です。政府が次にどこを強化するかで、世界の未成年オンライン規制の方向が見えてきます。
今後見るべき点は、次の三つです。
- eSafety Commissionerに、企業へどこまで強い命令権限を持たせるのか
- 年齢確認で、身分証、顔認証、端末情報のどれが実務上の標準になるのか
- 英国など、後続国がオーストラリアの失敗と成功をどう取り込むのか
子どもを守るという目的は分かりやすい。難しいのは、その目的を実際のスマホ画面でどう実行するかです。オーストラリアの次の改正は、SNS企業だけでなく、保護者、学校、本人確認サービスを巻き込む制度設計の試金石になります。
