豪ビクトリア州、学校の「画面時間」をどう減らすのか|2026年6月20日版
オーストラリア・ビクトリア州の学校改革で重要なのは、「生徒のスマホを預かる」だけではなく、授業そのものから画面依存を減らそうとしている点です。
2027年の新学期から、州立中等学校は毎日の授業計画に「端末を使わない学習時間」を組み込む方向です。ただし、当初報じられた「1日2時間まで」という固定上限については、その後、州政府側が中等学校には一律の時間制限を設けていないと説明しています。
要点は次の通りです。
- 対象はビクトリア州の州立中等学校で、開始は2027年の第1学期から
- 中等学校では、白板、紙、討論、実験、発表などを使う「端末なし」の時間を入れる
- 小学校では、3〜6年生に1日90分まで、低学年には最小限という制限が予定されている
- 障害や神経多様性のある生徒、専門科目などでは例外が想定されている
何が変わるのか
これまでの学校の端末規制は、スマートフォンを授業中に使わせない、校内で預かる、といった「持ち込み端末」への対応が中心でした。
ビクトリア州の今回の動きは、そこから一歩進んでいます。問題にしているのは、私物スマホだけではありません。ノートパソコンやタブレットを含む、学習用デバイスの使いすぎです。
The Guardianによると、州政府は中等学校に対し、端末を使わない学習を授業計画に組み込む方針を示しました。例として挙げられているのは、紙への記述、白板を使った説明、グループ討論、実験、パフォーマンス型の活動です。
つまり、単に「画面を見る時間を減らす」のではなく、教師が授業の進め方を組み替える必要があります。ここが政策の核心です。
「2時間上限」ではなく、学校ごとの設計へ
この政策は、発表直後にやや混乱しました。
教育相の発言を受けて、中等学校でも1日の画面利用が2時間までに制限されると報じられました。しかし、Herald Sunはその後、政府側が「中等学校に固定の時間制限はない」と説明したと伝えています。
現時点で読み取れる整理はこうです。
- 小学校: 年齢に応じた明確な時間制限を導入する
- 中等学校: 毎日の授業に端末を使わない時間を入れる
- 時間配分: 中等学校では学校ごとの判断と今後の協議に委ねられる
- 課題: 教師が科目ごとに端末利用をどう管理するかが残る
ここがポイント: ビクトリア州の政策は「端末禁止」だけではなく、授業設計を紙、対話、実験へ戻す試みです。一律の数字よりも、現場でどう運用できるかが成否を分けます。
なぜ学校は画面時間を見直しているのか
背景には、授業中の集中、メンタルヘルス、教室内の落ち着きへの懸念があります。
ビクトリア州では、州立学校でのスマートフォン禁止が2020年から始まっています。さらに2027年からは、スマートウォッチやヘッドホンなどにも制限を広げる動きが報じられています。news.com.auは、州内の公立、カトリック、私立学校を含む広い範囲での規制強化として伝えています。
ただ、端末は授業の邪魔者であるだけではありません。調べ学習、作文、プログラミング、支援技術、遠隔教材など、学習を支える道具でもあります。
そのため、問題は「使うか使わないか」ではなく、次の線引きになります。
- どの授業で端末が本当に必要か
- どの場面は紙や対話の方が学びやすいか
- 支援が必要な生徒のアクセスをどう守るか
- 教師の管理負担を増やしすぎないか
日本の学校にも関係する論点
日本でも、1人1台端末の活用はすでに学校運営の前提になっています。だからこそ、ビクトリア州の動きは「海外の学校がスマホを厳しくした」という話だけでは終わりません。
見るべきなのは、端末を配った後の段階です。
端末を使えば便利な授業は増えます。一方で、すべての作業を画面に寄せると、ノートに書く、発表する、実物を扱う、友人と顔を見て話す、といった学習行動が細ります。
ビクトリア州の試みは、学校がデジタル化をやめる話ではありません。むしろ、端末を使う時間と使わない時間を、学校が意識して設計し直す話です。
今後の注目点
この政策は、まだ細部が固まりきっていません。今後見るべき点は明確です。
- 中等学校向けの最終ガイドラインで、どこまで具体的な基準が示されるか
- 教師が端末利用を管理するための時間、人員、教材が用意されるか
- 専門科目や支援を必要とする生徒への例外が実務で機能するか
- 画面時間の削減が、集中や学習成果の改善として検証されるか
学校のデジタル化は、端末を配った時点では終わりません。次の争点は、画面を閉じる時間を誰が、どの授業で、どんな理由で決めるのかです。
